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中国への進出法務

ECサイト運営にまつわる法律問題 BtoC取引の場合・その①

EC市場の拡大とともに、事業規模に関わらず、ECサイトを自ら構築し、自社の商品・コンテンツを売るということが、非常に身近なビジネスの手段となりつつあります。

そこで、この記事では自らECサイトを構築して商品・コンテンツを販売する場合(とくに、事業者―消費者間(BtoC)の取引の場合)に、どのような法的問題があるのか、まとめたいと思います。

ECサイトでの商品販売と法律

 ECサイトを作り、サイトを通して商品やコンテンツを販売する場合には、おおむね以下のような多くの法律のルールに合わせることが必要です。(カッコ内は法律の正式名称)

 ・ 特定商取引法(特定商取引に関する法律)

 ・ 電子契約法(電子消費者契約に関する民法の特例に関する法律)

 ・ 特定電子メール法(特定電子メールの送信の適正化等に関する法律)

 ・ 個人情報保護法(個人情報の保護に関する法律)

 ・ 資金決済法(資金決済に関する法律)

 ・ 景品表示法(不当景品及び不当表示防止法)

 ・ プロバイダ責任制限法(特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律)

 ・ 不正アクセス禁止法(不正アクセス行為の禁止等に関する法律)   ・・・etc

この記事では、ECサイトの運営上で主に問題となることが多い、特定商取引法、電子契約法に絞って、ECサイトにまつわるルールをご説明します。

特定商取引法上の広告表示の規制

 ECサイトでの商品やコンテンツ等の販売は、特定商取引に関する法律(特定商取引法)の「通信販売」にあたり、広告表示について、以下のような2つの規制を受けます。

 ・ いわゆる「特商法上の表記」の表示義務(積極的広告規制)

まず、ECサイト上で、以下の各事項について表示することが必要とされています(特定商取引法11条)。

・ 販売価格(役務の対価)(送料についても表示が必要)

・ 代金(対価)の支払い時期、方法

・ 商品の引渡時期(権利の移転時期、役務の提供時期)

・ 商品若しくは特定権利の売買契約の申込みの撤回又は売買契約の解除に関する事項(その特約がある場合はその内容)

・ 事業者の氏名(名称)、住所、電話番号

・ 事業者が法人であって、電子情報処理組織を利用する方法により広告をする場合には、当該販売業者等代表者または通信販売に関する業務の責任者の氏名

・ 申込みの有効期限があるときには、その期限

・ 販売価格、送料等以外に購入者等が負担すべき金銭があるときには、その内容およびその額

・ 商品に隠れた瑕疵がある場合に、販売業者の責任についての定めがあるときは、その内容

・ いわゆるソフトウェアに関する取引である場合には、そのソフトウェアの動作環境

・ 商品の売買契約を2回以上継続して締結する必要があるときは、その旨及び販売条件

・ 商品の販売数量の制限等、特別な販売条件(役務提供条件)があるときには、その内容

・ 請求によりカタログ等を別途送付する場合、それが有料であるときには、その金額

・ 電子メールによる商業広告を送る場合には、事業者の電子メールアドレス

 (以上につき、特定商取引法ガイドhttps://www.no-trouble.caa.go.jp/what/mailorder/から引用)

 

なお、これらがいわゆる「特商法上の表記」と言われる記載事項です。      

 ・ 誇大広告等の禁止と不実証広告規制(消極的広告規制)

また、ECサイトでは以下のような広告表示は行ってはならないとされています(特定商取引法1 

2条)。

  ・ 著しく事実に相違する表示

  ・ 著しく優良・有利であると人を誤認させる表示

  これは、いわゆる誇大広告を規制するルールですが、広告に表示されている事項が事実に反していることや、有利・優良ではないことを消費者が知っていれば契約をしなかったと言えるような場合には、「著しい」誇大広告と言えます。

  具体的に、このような誇大広告に該当するかの判断は、事案ごとに異なりますので、弁護士等の専門家にご相談されることをお勧めします。

 

  また、このようなECサイト上の誇大広告が疑われた場合には、EC業者に対し、業者が行った表示の裏付けとなる資料(つまり、広告表示が事実に合致していることの裏付けとなる資料)の提出が命じられ、資料の提出ができない場合には、主務大臣が指示処分や業務停止命令を発令することができます(特定商取引法12条の2)。

特定商取引法・電子契約法による注文者の保護

 ECにおいては基本的にネット上でのクリックでの注文となりますので、対面での取引と異なり、契約がいつ成立したのか分かりにくい、という特色があります。

 そこで、以下のようなルールによって注文者の保護が図られています。

 ・ 電子契約法による消費者保護

  まず、「電子消費者契約に関する民法の特例に関する法律」(以下、「電子契約法」)では、ECサイト上での取引については、

 ① 注文者の操作ミス等による意思表示の無効(つまり、注文キャンセル)を認める。(電子契約法3条)

 ② 承諾の意思表示が消費者に到達したときに契約が成立する。

 ③ 未成年者による注文の取消しが広く認められる。

というルールがあり、これにより注文者(消費者)の保護が図られています。

 ① 操作ミス等によるキャンセル等が広く認められている

 ①は、注文者(消費者)がPCの操作ミス等で誤って注文等をしてしまった場合に、広くキャンセルが認められており、事業者側から「キャンセルはできません。」といえる場合が限定されている、ということです。

事業者としてはこのルールへの対策として、サイト上で、注文の前に注文者の真意を確認する措置を講じることにより、クリックミス等での注文キャンセルを防ぐ事ができます。

  ② 注文承諾の通知が消費者に到着した時点で契約成立

 ②は、事業者が注文承諾の通知を発した時点で契約が成立するのではなく、注文承諾の通知が消費者に届いて初めて契約が成立する、ということです。

 例えば、ウェブ画面で注文承諾を行う場合には、消費者のモニター画面上に承諾通知が表示された時点で契約成立、ということになります。

 また、電子メールによる承諾通知であれば、事業者のメールボックスに読み取り可能な状態で届いた時点で、通知が届いたとされ、契約が成立することになります。

 ですので、上記の時点までは、契約が成立しませんから、注文者(消費者)も、注文を撤回することができることになります。

 なお、このルールについては電子契約法4条が定めていたところ、民法改正により、この条文自体は削除されましたが、上記のルールは変わりありません。

 ③ 未成年者のキャンセルは広く認められる

 取引一般では、未成年者は契約を取り消すことができるのが原則ですが、年齢を偽る等、「未成年者の詐術」といえる行為があった場合には、例外的に取り消しが認められません。

 ③は、電子商取引の場合には、よほどのことが無い限り「未成年者の詐術」に当たらず、未成年者は契約を取り消すことができる、ということです。

 具体的には、単に「成年ですか」との問いに「はい」のボタンをクリックしたり、間違った生年月日等の入力をするだけでは「詐術」にあたらず、

「未成年者の意図的な虚偽の入力が「人を欺くに足りる」行為と言えるのかについて他の事情も含めた総合判断を要すると解される。」

(平成28年度版電子商取引及び情報財取引等に関する準則と解説111頁)

とされています。

 また、特定商取引法14条では、事業者が

 ・ あるボタンをクリックすれば、それが有料の申込みとなる、ということが分かりやすく表示しなければならない

 ・ 消費者が申込みの内容を簡単に確認・訂正できるようなサイト表示にしなければならない

とされています。

 

このように、ECサイトを構築して商品やコンテンツを販売する事業者は、上記のような特定商取引法・電子契約法の規制に注意する必要があります。

さいごに

 この記事では、ECサイトでの商品・コンテンツ等の販売を行う際の法律上のルールについて、特定商取引法・電子契約法に絞ってまとめました。

 本記事の冒頭で述べたとおり、これ以外にもECサイトには多くの法律が関係します。

 また、本記事であげたのはBtoCビジネスのサイトを構築・運営する場合のルールですので、例えばCtoCのショッピングモールを運営する場合には、また別のルールがあります。

 これらの点については、別記事でまとめたいと思います。

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